肺がん検診・検査機器の差で死亡率が50%減に
国内のがんの死亡数でどの臓器が一番多いのかご存じだろうか。
男性1位(5万3000人)、女性2位(2万1000人)、男女合わせて1位となるのが肺がんだ(2017年統計)。
がんは遺伝子の異常により起こり、高齢になれば発症率が上がるとされる。
その中で肺がんによる死亡数が最も多いのは何かワケがあるのに違いない。
そこで読者のみなさんにクイズ。
Q 肺がんによる死亡数が1位のワケは?
(1)いい治療薬が少ない
(2)喫煙者が増えている
(3)検査方法に問題がある
A (1)は「×」。肺がんの治療薬は種類も豊富で、しかも進化している。
がん細胞を特異的に攻撃する分子標的薬がいち早く使われ、さらに本庶佑・京都大特別教授がノーベル賞に輝いた免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」も肺がんに適応された。
(2)も「×」。喫煙率は年々減少傾向にある。
ただ、禁煙していても喫煙経験者は後に肺がんを発症するケースもあり、安心はできない。
ということで、正解は(3)の検査方法だ。
がん研究者によると、肺がんの死亡率増加は、ある検査方法では見つかりやすいのに、別の検査方法では見つかりにくいことが理由の一つだという。
2つの検査方法で調べた50代女性の肺の画像を示してみよう=写真。
左は通常のエックス線画像だが、円内にあるはずの影がほとんど見えない。
一方、右はコンピューター断層撮影(CT)画像で、円内にはがんを示す白い影が見てとれる。
この違いについて日本CT検診学会の中川徹理事長(放射線科医)は「エックス線でもがんの影を見つけることはたくさんあるのですが、この画像のようにほとんど判別できないケースがある。
がんがまだ小さい段階でCTがとらえた例です」と話す。
CTといっても治療ではなく検診目的の際は被曝(ひばく)量を落とした低線量CTにすることが肝心という。
この画像の見え方の差は偶然ではなく、今年2月の検査関係の学会でも低線量CT検診の有意性が示される発表があった
。茨城県日立市の住民を対象とし、低線量CT検診を1回以上受けた1万7935人(男性9790人、女性8145人)とエックス線検診のみ受けた1万5548人(男性6526人、女性9022人)を追跡し、肺がんの死亡を調査。
結果は、低線量CT検診を受けた人の方が肺がんの死亡率が約50%減少したという衝撃的な差だった。
「CT検診の方が早期の段階で肺がんが見つかり、早期治療を行い、死亡率低下につながったということです」